『フロックコートと羽織袴〜礼装規範の形成と近代日本』
株式会社勁草書房発行(2016年)
小山直子著(敬称略)
明治維新より流入した西洋の洋服である『洋装』が、浸透していく過程を歴史的資料に基づいて検証されています。男性は洋装、女性は和装。礼装における男性のフロックコートとシルクハット、女性の白襟紋付という一種特異な時代。政治主導で形式的に推し進められてきた洋装化は、西洋本来の文化的側面の積み重ねや流行を無視し、独自の発展を遂げていたようです。現代日本でも定着しているとは言い難い、スーツスタイルの『無意識のダラしなさ』は、ここに原点を見出すことができるのではないでしょうか。
また、洋装化の流れの一側面として日本の伝統的な『和装』が虐げられていく過程は、もの悲しい感情として心に迫ってきます。自らの伝統文化である和装を、洋装より格下に位置付け貶めていく、当時の日本政府の西洋模写に情けなさと滑稽さも感じます。現代のクールビズにもこのような傾向が垣間見えると感じるのは、私だけでは無いはずです。本文が当時の歴史的資料をそのまま引用されているので、漢字と仮名混じりが少し読みずらいかも知れません。送り仮名は欲しかった。