『ヴィクトリアンダンディ〜オスカー・ワイルドの服飾観と「新しい女」』
株式会社勁草書房(2015年発刊)
佐々井啓著(敬称略)
19世紀ヨーロッパにおけるダンディの末裔と言われているるオスカー・ワイルド。独特の小公子スタイルもさることながら、小説家、劇作家、文筆家としての活動も盛んでした。本書は劇作家としての彼の功績を、当時の資料を通じて論考されています。登場人物のセリフや役柄、人間性を考慮した衣裳演出。女性の装いにおける「機能美」の追求と、「流行」へのアンチテーゼなど。様々な観点から彼の服飾観が垣間見えます。男性でありながら当時の女性の生き方、在り方に装いを通じて変革を促す彼の言葉。一般向けというかスタイリストや服飾関係者におすすめの一書です。

登場人物と役柄に相応しい彼の衣装演出は、最先端のファッションとして当時の様々な情報誌に取り上げられています。また、19世紀末の『ジャポニズム』による和柄モチーフや着物の影響が見られる衣裳などもあり、西洋の装いに日本の美的センスを取り入れようとした形跡も見受けられます。
女性が男性的な装いをすることがタブー視されていた時代において、いち早くテーラーメイドのジャケットや、ブルーマー、ディヴァイデッドスカート(ワイドパンツのようなもの)などの、機能美を追求する彼の視点に驚きを感じました。ますます彼を知りたくなってきました。